辻褄合わせタイムマシーン・ロックンロール

夜明けを迎える頃、第五次聖杯戦争が終わりを告げた。
最強であるはずの英雄王は不可侵の妖精郷を擁する騎士王に敗北し、必死の運命にある神父はその爛れた心臓を少年に砕かれた。
そして愛しき人と別れた魔術師は、死に行く家族を救わんと再度妖精郷の再現を試みる。
結果、杯に宿る魂は打ち消され、座に還る。それは、一人の人間の死をも同時に意味した。
古びた洋館に横たわる女魔術師。瀕死の彼女を辛うじて此岸に繋ぎとめていた力が、朝日に溶けるように無くなっていく。
誰も気付くことなく拡散していく体温。
バゼット・フラガ・マクレミッツが息絶えるのを止める術はない。
もう取り返しがつかない。彼女の死は決定事項だった。

「……?」

白の少女を抱えて石段を降りる少年がふと足を止めた。
理由もなく申し訳ないような気分になったのだが、そもそもそれが何で、何に対しての感情なのか見当がつかなかったので、首を傾げて気のせいだと片付けた。

その死には誰も気付かない。遺体は黙して朽ち行くのみ。






常冬の雪に閉ざされた城で、一人の老人が苛立たしそうに机を叩いた。
握り締めた手には一枚の書簡。

「魔術協会、聖堂教会ともに冬木聖杯の放棄を決定、トオサカ、マキリもそれを了承。ついてはアインツベルンも放棄に賛成されたし……?」

呻く老人。たった一枚。たった一枚の紙切れで千年の悲願を捨てやれと言うのか?
馬鹿馬鹿しい。了承などできるはずがない。監督役一人の暴走程度で何を怖気づく必要がある。
諦めぬ。決して聖杯を諦めはしない。放棄など許しはしない。
眼前、誰もいないはずの空間を射殺さんばかりの眼光で睨みつける老人。
そこに幻視するのは悲願を達成した己の姿か、はたまた逃げ出した臆病者のかつての協力者達か。
こうしてアインツベルンの妄執は止まらず、狂気は歯車を回し続ける。

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